福岡の看板製作・サインデザイン

ディスプレイデザインと看板

Briefing for Display design
ken.Egami 2020/05/13

 ディスプレイ業と屋外広告業は"見せること"で何らかの情報を伝え、コミュニケーションを図る意味においては同じ目的の業種といえる。だが、日本標準産業分類によるとディスプレイ業は「サービス業」に、屋外広告業は「学術研究,専門・技術サービス業」の中に区分されているので"呉越同舟"のように思える。
 
 屋外広告業が扱っている看板とサイン(saignage)は同義だ。signという言葉はジェスチャーや手の動きの意を原義とする。身振りによるコミュニケーションというわけだ。この原義にオーバーラップさせると、ディスプレイデザインはその人が着る服をデザインしているという考え方もできる。それならコミュニケーションも深化する。
 
 表示によってアイデンティテーを訴求するのが看板の大きな役割だ。そう考えるとディスプレイデザインも無縁ではない。明治時代の豪華に彫刻された薬屋の金看板はそれを物語っている。
 しかし、設置環境やブランドの程度によってはシンプルで分かりやすい方が機能的だ。おしゃれなショップが立ち並ぶサインの多くもシンプルでわかりやすい。でもショップの個性は伝えたい。そこでディスプレイの役割を担っているのが素材や背景、照明であり、そうした商業地区ではセンス良く使われている。そうなると、やっぱりサインもディスプレイの一種じゃないかと思ってしまう。
 
 大局的に見れば、看板はコミュニケーションの一媒体である。ビルに貼られた広告サインを見て面白いと思ったり、なんか変と感じたりする。上品にデザインされた看板を見ると、良いモノを置いていそうだと思う。また、社名だけの看板でさえも、その場所を探していた人を安心させる。コミュニケーションという言葉は許容量が多く、都合の良い言葉だが、『新社会学辞典』に従えば、これら全てはコミュニケーションである。
 
 看板の中で、最もコミュニケーションを感じるのが「サイドウォークサイン」だ。日本ではA型看板や黒板スタンドなどとよばれている、ショップ前に置かれた小型看板である。A型看板というのは40年以上前からよばれていた業界用語だ。もう少し効果的な名称が欲しいと思う。それに似たのがお寺の前の掲示板だが、これにもこれといった用語があるわけではなく、そのまま「お寺の掲示板」とよばれている。
 
 最近はチョークアートが流行っていて、凝った黒板看板も見かけられるようになった。黒板型のサイドウィーク看板は、チョークで文字が書ける。ビジュアルコミュニケーションが見た側の想像による応対なのに対し、文字によるコミュニケーションは、伝えたい人の意向を確実に伝える。そして手書きならでは風合いには、読み手との距離を近づける。だから、レスポンスも弱くない。飲食系の多くでは営業時間やメニュー板として使われているように思う。それを見て入店する人もいるだろう。
 
 サイドウォーク看板はお客さんを誘引する魔法のような役割がある。福岡の中心部のショップ前にもたくさんのサイドウォークサインが出されている。とあるショップの前の看板に書かれていたのは「なぞなぞ」だった。そして「わかったら飴あげる」と書かれていたが、そのまま通り過ぎた。それから何十メートルか歩き、答えがわかった。その時点で僕は魔法にかかっていたのである。ショップに入り飴をもらった。販売している商品には興味がなかったのでお客にはならなかったが、質問だけはさせてもらった。「このクイズ看板で入ってくる人はいる?」「結構いますよ。」と店員は応えた。
 
 ポイントはキャッチコピーとイラストだ。例えば梅雨時に、「梅雨に入りました。お体に気をつけて。」などという季節のご挨拶文から、「どうしら白い歯になれるの」、「ヘアケアのうそ・本当」といった専門家としての情報提示、「ミジキチをご存知ですか?真面目できちんとした人の略です。」といったつっこみどころ満載のキャッチコピー、バーカウンターに座る猫のイラストを使った四コマ漫画になっていて、ウィスキーくださいと言う。それをこぼす。そして、おかわりちょうだい。」など、その表現は多種多様だが面白い。
 
 藤村正宏氏の『「高く売れ!」「長く売れ!」「共感」で売れ!』の中に久留米の人が紹介されていて、自分の顔を出して商品を紹介するPOPで売り上げが600%になったというのもある。藤村氏によれば「スペックの説明よりも、お店の人が個を出してすすめることが効く」という。要するに個性的なサイドウォークサインはお客さんを誘引する魔法の看板になる。
 
 「優れたコミュニケーションは、ブラックコーヒーと同じくらい刺激的で、寝付けられなくする」といった人がいる。そこまでグサッと刺さる言葉を考えられれば、コピーライター級だが、あまりひねらないぐらいが丁度良いように思える。仏教伝道協会主催の2018年「お寺の掲示板大賞」は「おまえも死ぬぞ 釈迦」だった。そしてバズった。サイドウォークサインも同じように通行人を相手にしたコミュニケーションの域から予想外の効果をもたする可能性がある。

サインボード
1.キャッチコピー及びロゴマークの発案・デザイン

看板はブランド表出の一手法であるが、コミュニケーションを深める側面もある。キャッチコピーやロゴマークを用いてインタラクティブなコミュニケーションを図ることも可能だ。
 
 
 
<創業120年以上の事業者様の看板の刷新>
・ロゴマークの刷新と壁面への表出でブランド訴求を図る
・コンセプトを明確化できるキャッチコピーの発案
・事業内容の整理と削除
・明治時代の印刷物を看板に応用し、老舗感を創出
 
施工前
施工前
 
壁面デザイン
壁面の形状を利用してロゴマークをペインティング
看板
明治時代に木版印刷された印刷物をレタッチして看板化
看板
事業内容の整理及びコンセプトのコピーライティング
壁面デザイン
壁面の形状を利用してロゴマークをペインティング

2.筆文字サイン

 筆文字を使ったサインは書体によるコミュニケーション媒体になる。個性的な筆さばきはそのお店ならではのオリジナルを発信するアイデンティテーであり、ロゴマーク(CI)の一手法としても使われている。もちろん看板にも使われていて、和風処が多いようにも感じるが、欧文筆文字など使い方次第では多方面に活用できそうだ。
 
 ハードなエッジを特徴とするフェント文字にくらべ、日本的特有のナイーブさを含み、施主の遊び心溢れる筆文字は、「商業書道」とよばれることが多い。品が良いなと思うのもあれば、何か心を動かされる素朴な書き方、大胆かつ絶妙のバランス感覚の筆使いをしたクールな文字など一様でない。
 
 藤原鶴来の『和漢書道史』によれば、書道の流派ができたのは、室町・桃山時代で、三筆三蹟から派生したという。「世尊寺流」や「法性寺流」、「持明院流」「御家流」など生まれた。『徒然草』で知られる吉田兼好は「世尊時流」だったという。これらは書道の正統派だが、「商業書道」はオリジナル性が高く、個性的な文字を書く人なら誰でもできそうだ。しかし、意外と思うようにいかない。決まりはないというのに、基本的な「書き方」に倣ってしまうからだ。つまりこの手の能書家に教えてもらわないと書けるものではない。
 
 幸運なことに福岡にはグラフィックデザイナーとしても有名な平松聖悟氏がいる。氏によれば商業書道ではなく、デザイン書道の方が適しているいう。彼こそは絶妙のバランス感覚とダイナミズム溢れる書を描くことができるデザイン書道家だ。パフォーマンスも素晴らしい。そんな聖悟氏からちょっとだけかじらせてもらった。彼の雅号は「眉仙」。だから「眉仙流」となり、デザイン書道にも流派があることになる。
 
 デザイン書道の全てはバランスだが、それだけでもいけないようだ。第一に度胸のような気合いが要る。この姿勢は、図形や文字を組み合わせてつくるロゴマークと少しばかり違う。書道には筆の息遣いが表れる。これが筆文字ならではのコミュニケーションだ。つまり、優れた筆文字看板は生きている。描かれた時のライブ感さえ伝わって来る。これは筆文字看板の持つ最大の特徴であり、人を惹きつける魅力ともいえる。
 
 僕はちょっとだけしか教えてもらっていないが、相当、奥の深い何かがある。そして、それは人間性にも大きく影響しそうだ。聖悟氏を見ているとそう感じてしまう。 
筆文字看板
造園屋の筆文字を使った看板
筆文字看板デザイン
看板施工
居酒屋の筆文字看板

 
 


3.ブランド表示看板

1)ブランド表示看板とは

ロゴマークやタイポグラフィを全面に打ち出した看板は、企業のブランディング戦略の一手法である。シンプルかつ瞬時にその場所を示すだけでなく、企業のプレステージを高める。
 
デザインは極めてシンプルだが、その構造や設置場所の選定だけでなく、各種法令への注意が欠かせない。
 
2)各種法令
・屋外広告物法
都道府県、政令市、中核市には「景観法」という条例があり、看板設置禁止区域や看板の大きさ、色、意匠(デザイン)などの制限などが定められている。
 
・都市景観法
都道府県、政令市、中核市には「景観法」という条例があり、看板設置禁止区域や看板の大きさ、色、意匠(デザイン)などの制限などが定められている。

都市景観法の概略→

 

福岡市都市景観条例→

サインデザイン
サイン塔デザイン

 
 


4.グリーンサイン

 看板は古代ギリシャ・ローマ時代から使われている古典的な広告手法だ。そしてテレビ広告と同じようにそのシステムは変わっていないように思える。しかし、テレビCMが画面を抜け出せないのと違って、看板は進化している。
 
 例えば、デジタル看板は新しいと誰もが思うだろう。だが、その単純なデジタル看板の中には、通行人の数をカウントしたり、その日の天候の具合で広告を変える技術も使われている。寒い日はコーヒーの看板になり、暑い日は冷たいドリンクといった具合だ。
 
 この人工グリーン看板も進化の一つと言えるだだろう。これまでの看板資材は無機質でハードな素材が大部分を占めていた。しかし 人工グリーンで演出されたサインは、無機質な看板を有機的に変える。それまでの単なる表示物に過ぎなかったサインがコミュニケーションツールとして働き、ショップと客とをつないでくれるかもしれない。
 ◆

 植物の視覚効果に関する研究では、オフィスでの視覚疲労の緩和により作業の効率アップや、医療現場でのストレス軽減、緊張感の緩和、教育現場におけるストレスレベル軽減など様々な空間環境で、肯定的な生理的、心理的効果があることが明らかになっている。*1

   *1「室内に設置された身近な植物が人間の心身に及ぼす影響 」京都府立大学大学院生命環境科学研究科 
 

 人工グリーンの質的向上
 かつての造花装飾においても種類の増加や擬似性の向上は見られたが、今日の人工グリーンはシダ植物やコケ類、オリジナル植物なども追加され、その種類及び擬似性ははるかに高くなり、供給量も多くなった。
 そうした人工グリーンによるボタニカルな空間は、まるで自然をそのまま感じさせるほどだ。最近、人気急上昇のディスプレイアイテムだ。

グリーン看板
 
 
グリーン看板

 
 


5.多国語サイン

外国人観光客の増加により、公共サインへの外国語表示が求められるようになった。
 
外国語サイン
外国語対応サイン

 
 


関連記事<Reated Article>